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卒業制作 2019

特集学生作品

卒業制作発表の後の審査風景。15名の教員が、学生1人づつの卒業合否判定を行います。学生作品への擁護意見や批評を飛び交わせながら、優秀賞の選定をします。

そのまわりで、学生達は教員達が交わす議論を静かに、時にはどよめきながら聞いています。

最優秀賞は、山本和生君。1年生の時から作品制作レベルのトップを走り続けました。

デザインは、最初から最後まで、コンピューターの中の3次元データで構想し、組み立てた建築。

優秀賞の木下広香さん。彼女も常にトップグループでした。

郷土、長野県の山形村の住民のための施設群。

 

点在する施設は、住民のための、読書や野菜や料理などの、生活支援活動と文化的活動をシェアするための場所。

保育園、書店・図書館、医療ヘルスセンター、郷土資料館、温泉の足湯、畑作業作業場、料理教室・食堂などをそれぞれの場所のテーマとして、1つずつ丁寧に生活者目線での設計を行いました。

夜に灯される照明の光は外部にもれて、この村を安全に暖かく見守ります。

同じく優秀賞の坂本佳奈美さんは、図面らしいものは描かないで、スケッチのみで空想の世界を表現し、ユニークな模型と絵本としてまとめました。

セイカ建築らしい作品。

見たことのない建築たちが、池のまわりを取り囲む村になりました。

タイトルは 「空の家」。

住民たちが生活するための機能を支えるパビリオンたち全体で、

ひとつの家。

アニメーションと絵本。

 

とても詩的です。

インテリア賞のシュブンイさんは、家具をデザイン。機能的には、椅子やスクリーン=間仕切り壁ですが、テーマは透明性の問題です。透明性の異なる障子を重ねると見えにくくなる作戦。

障子は和紙ではなく、現代の素材の再生ビニール製です。

家具の使用方法や効果は、映像で説明しています。

提中麻衣さんは、京都市内の島原地区の「路地」を地域住民が有効に利用するための提案。

敷地は8か所に点在し、その場所場所を読み込んだ提案は大変な力作です。

丹羽隼人君は、学生の街の集合住宅。

どういうわけか、関西大学のための提案。

なぜ、セイカ大学の学生のための住宅ではないのか。

 

教員たちは 誰も聞きませんでした。

おそらくは、自分が住んでいるなじみある街なのでしょう。

清水陽介君は、バイクのカウルから発想を得た巨大な駅舎建築。

空間を体験する 1:1のインスタレーションの提案は、長島大海君。

内部に空洞があり、光の移ろいと肌に触れるかすかなヒモの感触を体験します。

非日常世界を体験する気分転換のための建築が、ビジネス街にあれば。と。

実際に、「非日常空間」を演出した様子を、映像作品として展示しました。

さて、今年度、一番の話題提供作品。芳原和佳奈さんの自邸です。

通常の卒業制作で住宅を扱うのであれば、1:50~1:30の詳細な精度が求められますが、この住宅は違うテーマなので、

オブジェのような、小さな小さな 模型です。

自分が暮らした後、亡くなった後から、本当のストーリーが始まります。

家が自然に朽ち果ててゆき、遺体になった自分の栄養素を得た樹木や生物たちが育っていく。

「私がここで息絶えると家は崩れますが、私が世話をしていた木が大きく育ち、私は長い時間をかけて木の養分となるのです。そして木に集まる生き物の糧となり、世界に私の欠片が広がり続けるのです。死後も別の形で私が世界にある、という意味を込めて、タイトルを流転の家としました。」

 

彼女が今まで持っていた世界観を、最後に卒業制作として表現してくれました。

自然と人間と建築の関係について再考させられる、深い作品だと思います。

 

 

今年の卒業制作も、地域振興まちづくりデザイン、建築、家具、空間インスタレーション、空想世界などなど、とても表現豊かな幅の広い作品たちを見ることができました。

表現の 幅広さ と 自由さ こそが、セイカ建築学科の伝統的な

(まだ、30年しかないけど)

特徴です。

 

卒業制作は、学生たちが

「4年間学んだ集大成」 であると同時に、

「一生背負う 生きていく出発点」 です。

 

大事に一生涯心に留めながら、社会に出ていって欲しいと思います。

 

posted date 2020.02.14
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