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建築を学びたい と 考えている人へ

特集


7歳の子どもの作品。作品のテーマは「柔らかい建築と固い建築」。欧米では子どもの頃から、情操教育として建築・インテリアデザインを考えてつくります。楽しそうで、いいですね。

縁があって、建築を学びたい、建築デザイナーになりたい、と決意して、あるいは住宅デザイン、インテリアデザイン、いいかなあ、と建築関係の大学の門をたたく人へのアドバイスです。

日本にはたくさんの建築系の学科があります。国立では36大学。そのうち32大学は工学部や理工学部にあり、あとの4大学は、美術学部、芸術文化学部などの理系ではない学部に。私立大学は全部で111大学(多くて迷います!)。その6割は、工学部・理工学部の「理系」の大学。それ以外の3割は家政学部や生活環境学部などの「文系」の学部。そして1割の大学では、芸術学部、デザイン学部、造形学部などの、「芸術系」。なぜ、理系、文系、芸術系という3つの領域に分かれて、同じ「建築学科」があるのでしょうか。

理由は、「建築」が幅広い学問領域の知識や知恵を必要とするという事と、長い歴史を持つ学問だからです。海外の大学では、「建築学部」として、独立していることが多いのですが、そうでなければ美術学部や芸術学部に属しています。日本ではどうして、理系ー工学系にたくさんあるかというと、日本で建築学科ができた時からの今までの経緯の中で、地震などの理由から構造エンジニアを育成する必要があったので、その歴史があるのです。

どうして欧米では芸術系に属するかというと、15世紀のイタリア・ルネサンス期にさかのぼります。フィレンツェ大聖堂に世界最大のドーム屋根を架けるのに、建築足場を使わないで造る方法を、ブルネレスキという人が考えて完成させました。ブルネレスキは彫刻家であり金細工師でもありました。(下の写真)DSC_0049

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その後、「高い教養と科学的知識を持つ」という建築家の位置づけが決まっていき、技術者と分離した、学者+芸術家+デザイナーという仕事になりました。医者、弁護士、建築家の、3者は同等の社会的な地位と信用を築いて、世間から「建築家」という職業は認知されてきました。

ところが、イギリスでは、測量技師の仕事から発展してきたのが「建築家」という立場だったので、エンジニア・工学系。よって日本が欧米の文化を導入した近代以降、現在のように技術者=工学系、芸術家=芸術系に分離しました。また、文系の学部の母体には、近代以降に発達した「家政学」がありました。「衣・食・住」、にカテゴライズされるような、「すまい・住環境」を軸に研究し教育する学問領域です。

 

では、今の日本の大学で、その違いがどこにあるのでしょうか?ほぼすべての建築学科では、「一級建築士」という資格を取得するための勉強があります。ということは、どの大学を選んでも、建築士の資格を受験する権利があり、卒業後の試験で合格すればなれるのです。住宅系の学科でも同じです。この試験は主に構造・材料・設備の「理系」、法律・計画・歴史の「文系」、製図の「芸術系」、施工(実務的内容)の試験内容です。ということは、文系、芸術系の大学に入学しても、どの大学でも工学系の授業が待っていることになります。

では、他に何が違うのか?

それは、大学の「雰囲気」です。 独断で誤解を恐れずに言ってしまうと、

工学系は、まじめで固く、学問として研究を大事にやっています!みたいな雰囲気、

文系は、ゆったりと、おっとりとして、みんなで幸せを探しましょう!みたいな雰囲気、

芸術系は自由に伸びやかで活発に、楽しく新しいこと考えてやってみよう!みたいな雰囲気。

この事は、いろいろな大学の建築学科・住居学科を実際に訪問されたら、なんとなく雰囲気で理解してもらえると思います。しかしながら、雰囲気こそが、その大学の個性です。教育内容は文部科学省と国土交通省から細かな指示がでているので、あまり逸脱はできません。したがって、どの大学でも教育内容は同じように見えます。

基本的な教育内容が同じようなものであれば、後は4年間、どの大学で過ごすことが将来の糧になり、楽しく時間を過ごすことができるか、卒業生達の進路はどうなのか、特長ある授業やイベントが行われているのか、などについて情報を集めて、それを判断基準にするべきだと思います。オープンキャンパスに参加して、直接に学生の作品を見て、学生や教員と話してみることが一番わかりやすいでしょう。

 

街の雰囲気も大事です。セイカ建築のある京都は、世界中から建築視察団が訪れる世界遺産の宝庫。京都の建築をつくってきた過去の先達から学ぶことは、今でも多いです。海外に出ると必ず聞かれる事。貴方が知っている日本の建築で、どこが一番いいですか?日本の建築の特長はなんですか?その答えは京都にあると思います。

 

どこの大学でも、実際の社会で建築や住宅をデザインしている、実務もできる教員がいるので、そういう人に直接会って話を聞くことが一番判断しやすいと思います。

 

現在の芸術系の大学でも、静物デッサンなど、絵を描く試験「も」ありますが、平行して文系・理系科目、どちらかの学科試験だけで、あるいは科目を選択して入学試験が行われるようになっています。今現在、絵を描くことが苦手で、描いたことがなくても、入学後に授業の中で練習するので大丈夫です。建築・住宅デザインを学ぶのは、「理系からの工学部系」だけではない!ということだけは、強く、お伝えしておきます。

で、結論。

どの大学を選んでも、建築デザイン、住宅デザインの基礎は必ず教わります。 あとは、

 

1.その学んだ基礎を、どの方面に向けて自分なりの考えを展開していくか、という、たくさんある選択肢を可能にしてくれるような大学であること。でもそれは、入学前では見極めることは難しいし、それぞれがどのように違うのかもわからないので、学部3,4年生の作品を見たり、その大学の卒業生が実際にどのような仕事を行っているか聞いたり、どのような国際的な活動が行われているか調べたりして判断するしかありません。

(街のデザイン?、新しい未来の建築デザイン?、自分や家族が将来住む住宅?、カッコいい家具デザイン?、地震に強い建築?、ネット時代を反映した先端設備を備えた建築?、エンジニア?、デザイナー?、役所の営繕部?)

 

2.どのような雰囲気の中で、大切な4年間を過ごすのかということ。

だと思います。各大学の卒業生の活動を見ると、そのイメージはなんとなく伝わってくるでしょう。この大学は、どの方面を重視しているのか。卒業生の姿は、その大学が映っている鏡です。

 

建築を学ぶことは、勉強する量が多い分、身に付ける技能・技術は大きくて、それができるようになったら楽しいことは確実です。4年間過ごしていくと、知らず知らずのうちに、立体的な3次元での思考・発想や、異なる条件を調整し、新しい解決方法を生み出す能力(冒頭の子どもの写真のように) が身に付くので、卒業後の実社会でも、その力を生かす場所は、たくさん、たくさんあります。

とりわけグローバルな社会になっている現在では、国際的な視野やコミュニケーション能力は不可決になるでしょう。

では、楽しく学ぶ大学生活をおくることができそうな大学を選びましょう。

posted date 2018.03.19
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